今回は、趣向を変えて、学科試験の内容について少しお話したいと思う。今回は英語である。
まず、昨今の医学部入試が従来と大きく異なるのは、10年ぐらい前と比べ、入試の難度が急激に高くなっているという点である。
今日はひとつ、興味深いエピソードを通じそれを証明してみよう。先日、私のもとを、いわゆる優秀な医学部受験生のA君が訪ねてきた。そこで彼に、以下のような問題用紙を手渡し、質問をしてみた。
〈問題1〉以下の英単語の意味を答えなさい。複数の意味がある場合は、なるべく複数の意味を答えなさい。
1 outgoing 2 mine 3 grave 4 fire 5 book
ここまでは答えられて「当たり前」
A君は、私が渡したプリントを手に取り紙面をじっと見つめていたが、涼しい顔をしてすぐに答え始めた。
「1は『社交的な』『社交性のある』という意味です。2は『私のもの』という意味以外に、『鉱山』、『地雷』という別の意味があります。3は頻出ですね。『墓』という名詞と『深刻で重々しい』という形容詞があります。4は『火事』という意味以外に『~を解雇する』という動詞の意味が。同様に5も『本』という意味以外に『予約する』という動詞の意味があります。そんなところですが、先生どうでしょう」
なるほど、なかなかの秀才君である。でも、これは当たり前のことなのだ。何故なら、〈問題1〉の出典は、受験生のバイブルと言われる英文法・語法の問題集からの出題だからである。
A君のような真面目な受験生なら、この問題集を少なくとも高3時までには完全にマスターしているのが通常だ。そこで、次の出題を試みた。
私は〈問題2〉の用紙をA君に見せ、その反応を見た。
〈問題2〉以下の英単語の意味を答えなさい。
1 fulfillment 2 befriend 3 endocrine 4 farsight 5 audit
6neurosurgeon 7 glucose 8 plagiarism 9 tumor 10 bladder
11 urinate 12 anthropologist 13 saliva 14 breadwinner
この14問も(全部いーよ)と言えたであろうか?
次回触れることにする。