教師という職業は、冷やかし、皮肉を込めて聖職とか言われますよね。

 

それに対して予備校講師というのは、まさに唾を吐きかけられるような生業ですよ。

 

つまり、苦界に身を沈めるという言葉があるけれども、濁職ですよ。

私は似非エリートサラリーマンから聖職も経ず濁職に一直線に落ちた。

 

その時に世の中が違って見えたんですよね。【病院で大きい手術をした人ほど奇跡からの生還だとか、

錯覚を見たり、世界が違って見えたりというのと、たぶん同じだろう】

 

その時に一番感じたのは、まさに坂口安吾が指摘したことだと思いますが、それが’生きるということ’だと。

 

それでも伊藤琢哉は伊藤琢哉であるというように態度が変わらない人ばかりだったんですよ。

 

腹黒いお方で、一部、資本主義の犬から高等遊民的な仕事に変わったと、内心、思った人もいたかもしれないと思っています。

 

安吾自身がそう言っていたと記憶していますが、かなり若いときから、ある種の落伍者になるという傾きがあったらしい。

実は不肖私めも、相当根強く一貫して落伍者願望というのがあったんですよ。

階段があるとしたら、なんか上のほうに行きたくない。

仮にある程度まで行ったら、ちょっと転がり落ちてみたい。

そういう落伍者の感覚、願望がずっとある。

ひょっとしたら、今も落伍しているのかもしれませんがね。

いや落伍している。

それはたぶん生まれながらのものなんだけれども、私の場合から類推すると、安吾もおそらく生まれながらじゃないかと思うんだよね。

生きるということ、生活というのは、決して生き生きと生きるとか、みんなで一緒に仕事をするというんじゃなくて、生きれば生きるほど、如何ともしがたい孤独にさいなまれるということがあったんだろうと思いますよ。

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